闊達行雲のお絵かき&レビュー

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【クリア78時間】メタファーリファンタジオ:独特な世界観の魅力を評価・レビューする【中程度のネタバレあり】

 

こんにちわ、闊達行雲です。

 

10月に発売されたアトラス、スタジオゼロの新規大型RPG、「メタファーリファンタジオ」をクリアしましたので、早速レビュー評価したいと思います。

 

このゲームのポイントは、こんな感じだ!

 

ざっくりポイント

・クリア評価:総評82点、良作と言ってよいクオリティ

・アトラスの集大成であり、豊富なリソースを投入したチャレンジングな作品

・導入部など、同社のゲーム好きには共感を得られるであろう、主人公に感情移入できる、世界観、環境設定。それを大きなスケールで描いてある

・ロード時間は少し長い

・ストーリーはファンタジー要素のあるペルソナ

・セーブスロットは16個

・町並みは、ゼノブレイドを思わせる圧巻の作り込み

・要所要所でふんだんに入るアニメがgood

・全体的に物語に没入できるような仕組みがなされてある(支援者仲間で気に入るキャラがいるとさらに引き込まれる)

・戦闘はおもしろく、テンポは非常によい

・ファスト&スクワッドシステム:アクションとターン制コマンドバトルを融合させたようなテンポよく、爽快感のある戦闘システム

・ザコ敵を倒してのサクサクレベル上げが可能。難しいのは嫌という人も、難易度調整で、かなり楽になる

・アーキタイプが世界樹の迷宮のスキルツリーのようにあり、46種類と豊富

・ダンジョンは中盤以降長くなり、やりごたえあり

(過去作のオマージュが随所に見られる)

・もう少し、毒のあるキャラがいてもよかったかな。ファンタジーということで、最終的には主人公を中心にした、王権選挙の勝者がだれになるのか、なぜ王の魔法がこれほどの力を持つのか、主人公の出自・・・などとというところに物語の中心軸が収束していく

・総じて、丁寧に作ってあり、お金を払って大作を楽しみたいという人にオススメ。こういうのを出されると、某大手などは冷や汗もののスケール感だと思う

・全体評価:最後の最後まで練り込まれた物語

 

クリア時間は、78時間ほど(難易度NORMAL)。

多様に挿入されるアニメーションが物語の本編を最後の最後まで彩る、力作RPGになっているなという印象でした。

各種・評価サイトのメタスコアも高く、どのような出来かなと体験版を遊んでみましたが、物語の引きが強く、ペルソナ的な要素(とくに5からの影響強し)を感じましたので、これはおもしろそうだなと思い、即購入。

ポイントは、今私たちが住んでいる世界と似たような問題を抱えている国家・・・。そのような状況下で主人公は被差別種族であるエルダ族という民族である。

アトラスのゲーム全般に言えることだと思うが、設定に共感や、現実世界の中で、どこかはじき出された、浮いた感じのある人にとって、没入感のある導入部になっている。この点は、設計者がとてもうまくプレーヤーを誘導していて、そのような問題意識に関心のある人には物語世界への没入を強く感じられると思う。

ストーリーの舞台は、格差が蔓延する、かつては英雄王によって繁栄を極めたが、いまは各所に落ちぶれた人が寝そべり、種族差別がはびこる、美徳なき国家へと堕落した、ユークロニア連合王国。画面は体験版のDL容量でも分かるとおり壮大な作り込みとアニメーションに彩られていて、データ容量が大きい。28GBほどあり、体験版のデモ版ですらDLには30分ほどかかりました。この辺は長いですね、正直。

しかしながらその大きなデータも、無駄に使用されているわけではなく、格差・差別の蔓延する王国社会のありさまを上手に描き出している。作り込みは圧巻といってよく、知っている方はゼノブレイドのようにどこまでも広がる草原や大海原、雪原などを想起してもらえるとわかりよいかもしれない。

 

 

・旅情を感じるさまざまな旅の情景

3D空間ではなく、AVGのように一枚絵で街やダンジョンの情景を描いてある。

 

 

 

・ストーリー評価

 

 

主人公たちは序盤にて、一人でも多くの民衆の支持を集めた人が、国家の王になれるという王の魔法の発動によって、定められた期日までに民主の支持を勝ち取る競技ー王権競技会に出場することになります。

王の資格を争うのは、国教(惺教)のトップであるフォーデン、軍部あがりの天才軍師ルイ、ほか美意識過剰なナルシスト、パリパス族の格闘家、装甲戦車を持つ者など錚々たる面子・・・。

主人公たちはかろうじて鎧戦車を何とか手に入れるものの、他の王権候補者と比較して、もちあわせているものは何もない。しかし、王子の呪いを解き、正嫡である太子を国の王にするためにも、なんとしても競技会を勝ち残りたい・・・。そうしていく中でみつけた道筋が、「困っている人はだれでも助ける」という小さな決意でした。

序盤の方は、その意思に導かれるように、小さな城下町におきた事件を解決していくことになります。

ギャグ展開あり、ニンゲンに食われて、その体内を探索するなど、ファンタジーらしいワンダーな展開がつづきます。

そうやって小さな事件を解決に導いていくことで、徐々に支持を勝ち得ていき、特別な支援者との絆も築き上げていきます。

 

・支援者とのつながり

 

主人公たちのアーキタイプ(英雄像)は、さまざまなスキルを使用できるようになる、特殊能力のようなものですが、それは特定の人物とのコミュニティ(絆、つながり)を深めていくことで強まっていきます。

格闘家、戦士、魔術師、商人、仮面舞踏士、僧侶、探求者・・・。

総勢46種あるこれらの英雄像を究めていく・・・。それはそのまま、支援者との絆を深めていく中で、拡張されていく、目覚めていく資質なのですね。まさにペルソナのコミュランクをあげていくようなプレイフィールです。

主人公が身を潜めることになる酒場にいる少女マリアは、ペルソナ4の菜々子を思わせます。個人的にはククルスが好きで、コミュの先が見たいな~と思わせられるキャラでした。苦労人で惺教と魔導器に詳しい、商人のベルギッタは人気があるのか、SNSで描いている人を見かけますね。

上記のスクショはほんの一例で印象に残ったところをあげただけですが、個別にユニークなエピソードがもうけられていて、ユークロニア連合王国を構成する8つの種族の諸事情を絡ませながら、サイドストーリー的に世界観を深めています。デザイン的には格闘家のキャゼリナが好きですが、好みのキャラがいるとよりストーリーへの没入感が深まると思います。

ゲーム内ではその他にも王の資質を磨くということで、「勇気、見識、包容力、想像力、説得力」の5つの資質を鍛えていくというものもあり、やることはダンジョン探索だけではなくたくさんあります。それをカレンダーに従った日数をこなしながら、各ターム毎に決められた期日までに、アップさせていく。王の資質を磨きながら、各支援者との交流を深めていく。中には特定の資質がないと先に進めないものもあり、適切なスケジューリングが求められます。

・戦闘

そういう中で、大型の敵、強力な力を持った「ニンゲン」を、あるいは魔獣を、戦略を考えながら倒す。

コントローラーの各ボタンに配置された物理攻撃、スキル、防御、ジンテーゼ(協力必殺技)、隊列の前後、などを利用して、敵の弱点を突きながら、行動していく。うまくはまれば一掃できるすぐれたシステムである、メガテン3から続くプレスターンバトルは今作でも発展形として円熟の域に至っているといってよく、テンポが大変よろしい。

いまやweakを突いて、戦闘を進めていくいくというシステムは、テイルズしかり他の会社のRPGにも随所に見られるものになったが、キッカケはこっちが先。考えた人は素晴らしいアイデアマンだと思う。独創的で画期的なシステムだが、それを様々な角度から堀りさげ、一つのRPGとしてユーザーが大いに楽しんで遊べるラインにまで引き上げている。

ザコ敵との連戦、レベル上げはRPGの醍醐味で、これを楽しめるかどうかがRPGが本質的に好きか否かの分岐点だと思うけど、難易度はNORMALでもかなり高めに設定されていて、アトラス節を堪能できる出来になっているが、後半ストーリーを味わいたいという人にも、難易度を一つ下げるだけで敵の火力、こちらのダメージに変動があり、楽になるよう調整されている。

レベル上げをしっかりし、スケジュールを余裕を持ってこなしていけば、難易度NORMALでも、ラスボス始め、その取り巻きのボスは余裕で攻略できる。そのような手軽さもあり、ストーリーを楽しみたい人にも配慮されたものとなっている。

 

・ダンジョン

 

あれ、どこかでみたな、このカタチ・・・。

そう思った人はアトラス通かもしれません。そう、過去作のダンジョン構成と類似したダンジョンがあるのですね。こちらは中盤のダンジョンになりますが、世界樹の迷宮1のダンジョン(第五階層:遺都シンジュク)と似ているのですね。

あちらはニンテンドーDSで発売(2007年)で、先日もSwitchでリメイクされました。懐かしい・・・。もう17年くらい前になるのですね。

みごとに構造が再現?されていて、DSのダンジョンをそのまま3Dにして遊んでいるような錯覚に陥りました・・・。大変よいですね。3Dにしたのに、プレイ感覚がDSで遊んでいたときのそれを、うまく「再現(reappearance)」してるのですよね。

ダンジョンもメガテン5の中盤の難所:魔王城みたいに難易度が高く、それまでのストーリーダンジョンと比較して、MPがけっこう必要になる・・・。攻略難度がグッと上がるところです。

またFOEのような、徘徊するような強敵もいて、スイッチを駆使しながらそれらをかわし、最奥まで進んでいきます。上下の階層をいったりきたりしながら、動力の切れたエレベーターを起動させていきます。自分もRPGを作っているのですが、この辺はどうやって作っているのだろうと感心させられますね。ゲーム内で一番やり応えがあったところです。

メインストーリーを進める上でのダンジョンはしっかりと作り込まれていますが、既存のRPGで出現する「塔」や「洞窟」は、むしろサブクエで攻略するようなところにいき、鎧戦車の中やパーティ会場であったりとストーリーの進行に沿ったものになっていて、テンプレ化していない。

メインとなる王権競技会、そして王の選挙という主軸の骨子があって、それに沿ってきちんとダンジョンも構築されている・・・。そのような印象を受けました。自分もRPGを作っていて、湿地とか砂漠の遺跡とか作りましたが、本当にアイデアの引き出しが豊富だなと思います。

・後半のストーリー展開

王権競技会にて、力を得るために、王子に呪いをかけた張本人と目されるルイの配下に入り、信頼を得ながら、隙をうかがう。そして競技会も終盤にさしかかり、ついにルイに接敵、命を奪う。しかし・・・とこの後は二転三転する怒濤の展開がつづき、物語は終盤に入っていきます。

そんな中でフィデリオとバジリオのシーンは、なかなかいいシーンで、少し涙腺が緩みそうになりました。

フィデリオはファンアートで描きたいところですね。

そして主人公の覚醒。

自分は何者で、どういう存在なのか

最良の友であり理解者であった、王子の命は結局どうなったのか・・・。

選択肢を間違えるとバッドエンディング直行の、メガテン的な選択シーンが今作でも用意されています。これは最終盤のダンジョンでも存在します。

そしてラスダンへと流れるように展開していく。最終決戦の前のサブイベも豊富で、強力なドラゴンなどの強敵が待ち受けています。

ストーリーに起伏があり、二転三転する物語はありますが、ゲームの骨格部分は堅実丁寧に作ってある・・・。

自分はセガサターンの「デビルサマナー:ソウルハッカーズ」から縁がある古参ファンですが、この点が同社のRPGを評価している一番のポイントです。

 

・改善してほしい点

①マップの読み込み、宝箱を守る魔獣を倒した後の読み込み、セーブなどの待ち時間が若干長いかなと感じました。マップが長大なので仕方ないのかなと思いますが、そこが一つ。

②いわゆるダークファンタジーに位置づけられると思いますが、もう少しサイドストーリーに癖のあるキャラがいると、物語の濃度が増し、よかったと思う。マルティラのイベントみたいなのがもう一つくらいあるとよかった。

③最終盤のボスラッシュは、ちょっと多すぎてダレた。

 

・クリア後の感想、まとめ(続編も気になる作り込みの良作)

100点中82点。良作評価です。

ラストの締めがもう少しビリッとしてテンション高いまま、そのままズバッと終わった方が爽快感があって好きでした。

が、全体として新規RPGとしても、ユークロニア王国の他にも外界があって、そこに視察に行くみたいな話がありましたが、続編を作っても面白そうだし、世界観を広げて展開していくことも可能なほど、緻密な設定や人物が描かれているなと思いました。

王権選挙を通して、その中でどうやって王位を獲得していくのか、そのプロセスに一番のドラマがあり、現実世界でも自民党の総裁選などありましたけど、こういう切り口でRPGを描いた作品は類例がなく、種族の設定やモンスター、ニンゲンのモデリングも1から作ってあり、町並みのモデリングは圧巻といってよく、ペルソナ的テイストをもった、同社の代表的なRPGになっていきそうだなと感じた。

もし続編を作るならば、今回は集大成的な位置づけで、35周年作品という捉え方だったけど、今度は新しい戦闘システム、ペルソナ的なものから離れた新種のシステムを、この世界観で見てみたいな・・・。そのように思わせる内容でした。プレスターンから脱した新しい展開を、このような王道ファンタジーで・・・。もちろんカラーとして、ペルソナやメガテンに類似のものがあってもよいと思うけど、このRPG独特のシステムをあってもよいと思う。それくらい1から世界観・設定、モンスターのモデリング、構造物の設計の積み上げがしてあると感じた。

最新の新規IPでこれだけ完成度が高く、緻密な設定があり、世界観が出色しているものも少ないと思います。PS4,5お持ちの方で良質なRPGを求めておられる方には、良ゲーですよということ、をお伝えしておきたいと思います。